双極Planetary

詩とか小説とか。

Luger part2

重い罪人を監禁するだけの場所ではない。
罪を抱える者が陽の光を嫌い、進んで地下へ潜る事もあった。
そして許しを請うように来る日も来る日も祈りを捧げる。
血生臭い地下にあっても、それは罪人にとって聖堂と同じように崇高な場所だった。
ところが戦争が進み、この地域一帯が敵国の支配下におかれると…

老朽したその施設はいつしか軍事拠点として利用され、その意義を変えられてしまった。


ルガーお母様は私に、「リアン」という名前をくれた。
お母様は拷問史として、造りかえられたその地下施設で仕事をしながら暮らしていた。
拷問という仕事をこなしながら、地上の聖堂を訪れては私との時間を過ごすようにした。
聖堂にある祭壇の前で赤ん坊の私を胸に抱いて…
どこか不思議な旋律の子守唄を口ずさみながら…頭を撫でて寝かしつけてくれる。

赤い花がまばらに咲いた野原…
土と花の香り…
柔らかい風…
暖かい日射し…
眩しい光…
不思議な歌声…

そしてお母様から漂う、濃い血の臭い…

それらは幼い私を、とても安心させてくれた。
ルガーお母様は地上で過ごしている間、片時も私を手放さなかった。
それは周りから見れば母子の愛情というより執着に見えたかもしれない。
実際、お母様は私が成長するに連れて…
拷問の仕事をしている時以外は私をそばに置いておく、という事に妙にこだわるようになってい

く。
私が歩けるまでに成長すると、ルガーお母様は私に他者との干渉、外出も禁止した。
関わりを持つのはお母様だけ。

「お前は私の娘…」
「ずっと、ずっと、永遠に」
「お前と私だけの絆」

拷問史であるお母様はいつでも返り血を浴びたまま私の身体を抱き寄せた。
そして諭すように、語り掛けるように、私に話した。
私以外の人と話をしてはいけない…
一人の時は決して部屋から出てはいけない…
お前は私の娘なのだから、と。
それらを約束させながら、お母様は私に鍵を渡した。
それは先端の折れた鍵だった。
血痕の付いた奇妙な形の、もう使い物にならない鍵…
その鍵を手渡しながらお母様は私に話した。

「この鍵を持っておきなさい」
「これはお前の鍵」
「これからお前は」
「私以外の者と関わりをもってはならない…」

それは「束縛の証」だった。
まだ幼かった私はそれを漠然と理解していた。
でも私にとってそんな約束事は大した問題ではなかった。
私にとってはお母様が全てだったからだ。
お母様がいてくれれば… それだけで私は充分だった。


7歳まで成長した私は、司祭様の指示で働く事になった。
それは教会で飼育されている家畜の世話係で、およそ人との関わりがない仕事だった。
ルガーお母様が司祭様にそう命じたのかもしれない。
人との関わりを制限されている私にとって動物との触れあいはとても嬉しく、仕事は好きだった。
特に私が仕事を始めてすぐに生まれた仔馬が可愛くて、献身的に世話をしたのを覚えている。
仕事の時間でなくても、部屋をこっそり抜け出しては仔馬に会いに行った。
それはとっても賢い馬で、まるで私の言う事を理解しているみたいだった。
私と一緒に成長した、小さな栗毛の雌馬…

 

彼女は今、どうしているだろう。